過去にも数回レポしたこちら。しばらくご無沙汰してたのですが、今季のクリエイションはベトナム料理を全面に推した、ベトナム料理を知らない人にはもちろんのこと、お好きな方ほど楽しめる!?
これまでのORYZ
過去に数回レポした際にも、ここの試みというのは他のお店にないものがあり、オリジナリティがある反面、賛否あったことは事実。
確かに、わかりにくい側面もあったと思う。
ただそれは彼らの技巧と、時折迷路のようにはまりこんでいく発想の掘り下げによるものだと自分は解釈してました。
伝わらなければ意味がない。
そうですね。それは確かにおっしゃる通り。
しかし、シーンのリーディングをしていく存在はいつも最初、理解されにくいものだと思う。
難解にすればかならず良いものだ、とは思わない。しかし本人たちだって最初から完璧であり得るなんて思ってなくて、その後の進化を見据えて、試行錯誤してるんである。
そこに客が金を出して付き合う必要はない。
自分には合ってないな、と思った人が彼らに寄り添う義務はないだろうと思う。でも。。。
得意にこの7年8年くらいのホーチミンの食文化の移り変わりは目覚ましく、その中にあって、独自道を切り開こうとしてるこちらのお店の存在感は、自分には無視できない存在。
彼らのこれまでのすべてのコースは食べていない。むしろ、ところどころでしか参加してないので、常連ぶることはできないのですが、その上で言う。
彼ら、確実に進化している。
料理の技術やセンスの上でも、だけども、彼らの挑戦に時流や客がついてきた感も感じる。
料理って、はいどうぞ、とお店が提供した皿の上にのみあるわけじゃないですものね。どういう人間が食べてどう楽しまれるか、まで含んでのレピュテーション。
さあ、今季のORYZをご紹介しようか。
ORYZの料理は旅
これまで上に載せた写真の通り、この店では最初に「チケット」が予約席に用意され、これから出向く、ORYZの料理の国へのパスポートが提供されます。
正直にいうと、ここの料理はオリジナリティが高くて、重ねて使ってある素材の数もものすごく、正直これを英語で説明されても、よほど料理に詳しい人でなければ、ピンとこないケースもあると思う。
そこで。
なんと。
先ほど用意してもらったパスポートの日本語版を作ってくださってる!これならひと通りの説明を受けて、頭の中に宇宙が広がるだけだったとしても、スペースマウンテンくらいの解像度に持っていけると思うのです。
お料理の説明は彼らのエンターテイメントの一部なので、それはそれとして伺いましょう。
へー、そうなんだ!
と嬉しい驚きノリ悪所をしたのちに、あとはゆっくりこのパスポートを見ればいいのですw
ありがたいことには。。。
こちらのお店はミシュランのセレクテッドに選ばれて以降大人気で、いろんな国からのゲストを迎えられてる中、日本人比率はそんなに高くないにも関わらず、日本語バージョンを作ってくださってるということ。
この冊子、1冊を作るのにどれだけの労力とコストを要するかを考えてみてください。このパスポートの存在が報われているのかどうかは私にはわからない。
でも、お店がどれだけ、日本人のゲストに対しての敬意を払ってくれているのかはわかる。ありがたいことだ。
お酒を飲まない人にも嬉しい設定
ちなみにこちらのお店は、お酒が飲めない・飲まない方にも嬉しい設定があり、まず、
ノンアルコールドリンクの種類が豊富
これは単にシンプルな缶のジュースがあるということではなく、お店独特のミクソロジーを楽しみながら、ノンアルであるという点が一つ。
もう一つは。。。
お茶のペアリングがあるんです。
とてもとても質の良いお茶を組み合わせたペアリング。おそらく日常では到達できないだろうし、できたとしても嗜むにはちょっと高価。
だからこそ、こちらのようなお料理の際に楽しむのが吉時。
ペアリングというのは、料理に合わせたお酒であることが前提とされることが多い中、こういう価値あるノンアルコールのペアリングがあるというのは、非常に貴重なことだと思う。
元々ベトナムでは、アルコールが若い人にまで一般化されてきたのは最近のことで、もとよりフルーツジュースやモクテルの種類が豊富で、ノンアルでもきちんとお金を取れる文化を確立してるが。。
実は私はベトナムのお茶でも、それは成立すると思ってます。というか、すでにそういう提供をしている店は少なくなく、ただこのレベルのお料理と合わせてるところはまだ少ないなと。
貴重な機会だと思います。
お料理!
さて、お料理については一つひとつ紹介していると大変なことになるのと(品数が多いからオックスフォードの英英辞書くらいの厚さになりそう)時期が来たら今回のコースは変わってしまうので、駆け足で。
こちらは本来は肉餡入りの、米粉から作ったお餅のような食感の生地を楽しむ料理。
庶民食ですが実に上品に仕上げており、また素焼きの器での提供というのも良い。
カテゴリーとしては「餅」と称されてますが、どちらかというと団子や白玉などの方向性を有するもので、消化しやすいものでもあるので、初版に持ってこられても無問題。
ちなみに一般的には「餅」の中に肉餡を仕込んでありますが、今回は付け合わせとして上記おようなあれこれを添えて食べる趣向。
スープをこんなふうに仕立てるのもまた手間のかかることだ。
スプーンで掬うと、さらに細かいお仕事がなされていることがわかる。
手間のかかることをすれば美味しい、というわけではないが、こちらの皿はその意味をちゃんと感じさせてくれるものとなってるのがすごい。
貝を使った麺料理をこのように仕立てた上で、
オリジナルの味は踏襲しつつも、なるほどこういう解釈もできるのか、という新しい視点を楽しむ逸品。
この辺は、元の料理を知らない方が食べると「美味しいな」で終わるものかもしれませんが、ベトナム料理を食べ慣れてて、この料理を知ってる人だと、その料理の奥底にあるものから楽しめるんじゃないかと思う。
こちらの薄茶色の麺を見た瞬間に、「あっ、あの料理だ!」とわかる楽しさ。しかし食べてみるrと、確かに使ってる食材は近しいけれども、新たな味わい。
いやもう、この辺になるとニヤニヤしちゃうw
盛り付けも楽しく、どれも麺や米をベースにしながら、ほんの一口ずつの量にしてくれているので、次々と楽しめてしまう。
こういうテイスティングメニューが苦手な方にはまどろっこしさもあるかもですが、食をエンターテイメントと捉えて楽しめる方には、こんなアミューズメントがあろうかという愉悦。
こんなブンチャー↓、どうやったら思いつくのかw
でも食べるとブンチャーの片鱗は感じられるし、ただただ美味しいのです。
個人的に感嘆したのは、特にこの皿。
Bun Tahng。
北の味の中でも楚々とした美味しさが魅力の、出汁が決め手のお料理。錦糸卵や椎茸などが添えられてることが多く、日本でいうところの、五目にゅう麺的な?
いやはや美しい。
料理をされない方にはそれと気づけぬ点もありましょうが、多少なりともキッチンに立つことがある方が見れば、その手の掛け方、美しさがわかろうというもの。
良きお茶のインターバルがあり、↓はお口直し的一品。フランス料理のソルベ的な。
これが一応レモンティ、ということになっていたけど、ブラックティの香り、レモンの爽やかさ、そのかき氷の口当たりの良さ、梅を使ったゼリーのなめらかさ。
楽しい。
そうだ、このコースを食べていると、出てくる一品一品が楽しいんだ。
なんというか、なまじ元の料理を知ってるだけに、あれこれ追求することに夢中ですっごいテンションが高くて気づけなかったのですが…
楽しい。
もちろんお美味しさあってのことなのですが、思考の上ではまさに旅をしている感覚。そしてまさにベトナムを旅する際に感じるものがそこにある気が。
他の国を旅することと何が違うのかというと、どこか、懐かしい感じがするんですね。
ベトナムに旅行で来たり、住んでいたりすると、時折とても懐かしい気持ちになることがあるんです。
自分が生まれたわけでも育ったわけでもないのに、料理の味に、目に映る風景に、見かけた小物に、色使いに、何かふと、懐かしさを感じるものがチョイチョイある。
懐かしい、と感じるのはヨソモノには図々しい感情なのかもしれませんが、実際にホッとする場面があるのだから仕方ない。
そしてワクワクしながらもホッとする感覚をチョイチョイ感じられるのが、このコース。
アジア飯だからそう言うことがあってもおかしくなかろう、とも思いますが、アジア飯の中でもベトナム料理は特に、日本人の郷愁をそそる何かがあるような気がします。
楽しいながらも、慣れぬことに緊張するばかりの旅ではなく、ホッと落ち着けるポイントがいくつもある、おだやな旅。
このコースを楽しんでいる間中、私は同席した人と、実に純粋に目の前の料理を味わい、穏やかな会話を楽しみ、本当に充実した時間を楽しんだと思います。
ただ食事をした、と言うのではなく、その時間を楽しんだ。そんな充実感。
どうだろうか。
自分には、ここのコースはとても心安らぐ、それでいて好奇心を呼び起こされる非常に楽しいお料理だ。
最後のデザートまで、実に穏やかに「満たされた時間」を感じながら楽しんだ今季のコース。
これまでに楽しんだこちらのお店のどのコースよりも私は好きだったし、またこれまでのコースからは、明らかな進化を感じられて、その点もまたワクワクしたポイントでした。
ご馳走様です。
こんな人に&こんな楽しみ方
例えば、空腹を満たすだけのためであったり、日常のルーティンとしての食でないことは明白なので、食事に求めるものがそこにある方には強くはお勧めしない。
経験せずに好き嫌いを決めつけるのは勿体無いと思いますが、何せこちらのコース価格が、今や3,000k 前後。
ポジション的には「特別な時」のための食事の価格。
だから、気軽に「ぜひ試して見てください♪」などと軽々しは言えません。
ただ。。。
ベトナムを知りにお越しになった日本からのゲストのもてなしに、だったり、相手との会話をゆっくりと楽しみたい時の場に、とか…
特にベトナムの料理に多少のご経験をお持ちの方は、相手をリードしながらお食事を楽しむことも可能ではなかろうか。懐石的に。
そんな説明はできそうにない、と言う方も、日本語の解説がそばにあれば、ゲストと一緒に感心しながら納得しながら、楽しめそう。
何より、こちらのお店に限らず、ですが、目覚ましい成長を遂げられているお店の変化を楽しめるのは、私にとって何よりの楽しみ。
これは在住者でないと難しいこととは思いますが、以前の記事を見てほしい。

ぱっと見だけでもお料理が確実に洗練されていることがわかると思う。日本語のガイダンスを用意するなどのサービス面でもだ。
ご存知の通り、こちらのお店はミシュランのセレクテッドに選ばれた店、という看板もある。私の書いたものも含め、誰かの評価を丸呑みにするのが良いと言うわけじゃないけれど…
わかりやすい指標ではあり、それは高島屋さんの包装紙のように、手渡された側には「もてなしの心」が伝わる可能性が高いと言えると思う。
なので、あくまで興味を持ってもらえて、気が向いて、タイミングが合い、こちらの料理が生かされるであろう良き場面があったら、なのですが…
機会があれば、お試しあれ。
どこかのお店のような、と言う形容が一切できないオリジナリティ。その一点でも、この飲食店激戦区のホーチミンにあっては素晴らしいこと。
次回どのように変わっているかも、実に楽しみなお店です😊
ちなみに
お店情報
ORYZ Saigon
51 Tran Nhat Duat, Q1
Time: 17:00 – 23:00(月・火定休)
Spent: 4,000,000vnd /person(ドリンク込みです)
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