資格が不自由な皆さんに、私たちは普段どう接しているでしょう?
このお店の話題が出ていたので、リライトしました。私のお店紹介の中ではほぼ唯一、お料理の写真がない記事ではないかと思います。
ヘムの中の一角に
2017年2月
Hai Ba Trungから少し入ったヘムの奥にこちらのお店はあります。
noir は黒、を意味し、それは飲食店の店名にはありふさわしくないようにも思えますが、敢えてそう名付ける潔さ。
とある旅サイトでは長くレストラン部門で1位を続けた時期もあり、正直に告白すると、
「ちょっと変わったことをやってるところが組織票組んでマーケティングで勝ち取ったものだろう」
的なうがった見方をしていました。
その頃のホーチミンの飲食店事情は、実際にそのようなことをして、中身が伴わないのに、あたかも良いお店のように装うところが多かったから。
しかし今ではそれを深く深く反省しています。
体験もしていない人間の勝手で下世話な見方から感じた印象とは、全く別のものだったから。
英語かベトナム語ができた方が良い理由
多くのレストランでは、メニューを指差し、多少お店の方から何か聞かれることも決まってるので、英語ができなくてもなんとかなります。
が、こちらでは諸々のお店のシステムの説明や、ましてや暗闇の中に入ると、スタッフさんの言語のガイドが、かなり大きなウエイトを占めます。
もちろん全くわからなくても、なんとかはなります。が、できる方、通訳をされる方に同行される方が、何倍も楽しめることは間違いないかと。
なので私もよく駆り出されます(笑)
説明段階
お食事は時間が決められ、日に数回の回転性になっています。同じ会に申し込んだ人は同じタイミングで始めるため、待合場で全員が揃うのを待ちます。
ここに遅れないようにするのは、同回に参加する方にご迷惑をかけないようにすることだけでなく、お店への敬意でもあるので気をつけたいところ。
待合に入ると、目隠しをして、小さなパズルを楽しむ時間が設けられます、ある形のくぼみに、同じ形のピースを入れ込むと言うだけの大変カンタンなパズルなのですが…
目隠しをした途端、これが難しいゲームになるのに、まず驚く方がおられるかも。
何故そんなゲームをするかと言うと、ダイニング内での食事のほとんどが、そう言う形で提供されるんですね。視覚が効かないので、食器を引っ掛けて倒す可能性がある。
ので、くぼみのあるトレイに各皿を並べて安定させる。
目の見えない方の体験を、自分たちもするのです。
ってか、視覚が聴く状態でもドンガラガッシャンやる人間なので、私はよくよく気をつけなければ(-“-;)
そしてスタッフの方に手を引かれて、光のない世界へ。
リードされる側になり
席に着くまでの間、何も見えない世界を歩くわけですが、その心もとなさと言ったらありません。導いてくれるスタッフさんの手を、強く握りしめ過ぎないようにするのに精一杯。
不安、恐怖、ためらい、躊躇。
たった一歩足を出すことに、こんなにも勇気が必要なのか。
しかし立ち止まっては続くお客さんに迷惑がかかると言う、実に日本人的な理由から、怖い、と言う気持ちを飲み込み、リードしてくれるスタッフさんを信じて一歩一歩、足を出す。
そんなこちらのことが「見えているように」、
大丈夫ですよ、ゆっくり行きましょう。私たちがついているから大丈夫。
そう言われた時の衝撃を、どう言ったら伝えられるだろう。
彼らは、暗闇の中で自由だ。
暗闇が彼らの日常だから。
彼らの世界で、私たちはマイノリティ。
視覚が効く世界の中で、逆に彼らはマイノリティ。同じように、いや恐らくはもっとたくさんの危険にさらされ、時には心無い人の悪意にさえさらされることがあるかもしれない。
そんな中で、自分たちは「資格の不自由な方が過ごしやすように」と、一通りの「気を使ってる」様子を見せる。それの、なんと優位な立場からの思い上がりであることか。
暗闇の中を導かれ、数歩歩いただけの時間、距離で、これまで生きてきた自分数十年間の傲慢さを突きつけられたような気がした。
彼らは決してそれを責めない。
あくまで自分の中での心の動きではあるのですが、私は、彼が面している問題や困難、恐怖を「手助けすべき対象」としては見ていたけど、こんなにも大きな不安の中にあるものだとは、カケラほども理解できていなかったことを理解した。
なんと、浅はかな人間だったんだろう。
幸い、悔いるだけでは仕方がないと理解できる経験は積んで図々しくなっていたので、なんとかこれを前向きな経験と捉えよう、と持ち直したが…
ダイニングの席に着くまでの数十秒の心の同様、猛省、後悔、恥ずかしさの入り混じった内面との葛藤は、普段のほほんと過ごしている人間だけに、ちょっと堪えた。
目の慣れない遮光部屋で
暗闇のダイニング、とは言っても、そのうち目が慣れるでしょ?と思ってる方。
慣れるには、人間にはほんの少しでも光源が必要なのです。その光源が一切絶たれている中では、「慣れる」ということはありません。食事中は始終、暗黒です。
だから暗闇恐怖症だったり閉所恐怖症の気がある方は、ご利用は考えた方が良いか、事前にお店の方に伝えておいて、有事には速やかに対応してもらえるようにお願いしておいた方が良い。
そのくらい、真っ暗。
そんな中なので、食器は先ほど言ったように、数品ごとが1トレイに乗せられており、各容器は、その形になったくぼみの中に収まっています。
ただワイングラスは、足つき?!
まぢか。普段でも酔っ払ったら倒す人間なのに、見えない中で足つきのワイングラス。。。
そこで考えた。テーブルは壁沿いにピッタリつけてある。だったらグラスを壁際ギリギリに置いて、手前からの距離だけを探るようにしたら、左右の場所を探る手間が省けてリスクが
減るんじゃなかろうか、と。
あとはその壁の手触りやグラスへの距離、テーブルの形などから脳内に勝手にセルフVRを再生し、視覚は真っ黒なままなんだけど、脳内映像を頼りにモノを探したり掴んだりしてみると、これが中々うまくいった。
脳内映像は勝手な想像だし、感覚で得た質感や距離感は実際とは違ってる部分もあったと思うけど、全くゼロから毎回探り当てるよりかはスムーズだった気がします。
カッコいい言い方すると、「心の目」的なものを使ったのは初めてかも。ここでもまた
新しい体験。
コースは数種類あり、構成としては、前菜・メイン・デザートの3パーツ。ただし、前菜メインに4種類ずつの料理が出て来る!おおっ、これはなかなかゴージャス!
ちなみに2人くらいのときであれば、同じメニューを頼んだ方が感想をシェアできて楽しいと思います。目が見える状態なら違うのを頼んでシェアしたい所ですが、実際にやってみてこれ、違う物を頼んでいたら、かなりつまらなかったかとw
食事開始
まずは4種類の前菜。
4種類は小鉢くらいの大きさに入れられていて、1つのトレイに乗せられています。それぞれのお皿はそれぞれの形にあったくぼみにはめ込まれているので、ちょっと淵に手が当たったくらいではひっくり返ったりしないので安心。
味の構成があるのでしょうか。右上のお皿から時計回りに頂くように勧められます。実際同じ所から同じタイミングで同じ料理を連れと味わうのが面白いですからね。1つ1つを確認しながら食べ勧めます。
スープ、二種。最初は冷たいの。おお、クリーミーで何となく食べ覚えのある味。これは楽勝♪と思ってたけど、あとで聞いたら「えっ、そんなもんも入ってたん?!」と言う食材も。えーーーーっ(笑)
次は暖かいスープ。
こっれが、ごーーーーーつい美味しかった!!
深みがあって滋味に溢れて何とも安心するお味。しかも食べ進めてると「うわっ、なにこれ?!」のお楽しみも。しかもそれが、そんだけアタックのある美味しさのスープを超えて尚。。。
なんか。。スープ食べた段階で(ここ、とんでもないとこちゃうか?)という予感。そう感じた途端に俄然ワクワク。いや、来店前から楽しみではあったのだけど、
「ちぇりさん、めっちゃテンション上がってますねwww」
と笑われる程度には上がってた(笑)
ぶっちゃけると…
美味しいかどうかはわからんなーと思ってたから、ワクワクしてたのはその体験に対してだけだったんよね。それがゴッツ美味しい!!ってのがわかったもんで、脳内ダダ漏れ。。。(笑)
その後も驚きの連続。
前菜の残り2品にすら、どーーーーしても解明できなかった食材が。食べたことがある、と思えるものもあれば、その旨味が含まれる食材とはかけ離れた食感でしか無い物に翻弄されたりと忙しい!
あとで答え合わせ上がります
食事の後で、タブレットを用い、お料理の全容が説明されるのですが、当たってるものもあれば外れているものもあり。
食事中都度、あーだろうかこうだろうかと意見を言い合うのも楽しいのですよ。まぁ講釈垂れてあとで大間違いしたらこっ恥ずかしい訳ですが(笑)
それもありです。なぜならこの日に出された料理全て、どれ1つとして、Ordinary なものはありませんでしたから、視覚が有功だったとしても、分からない物があったことでしょう。
特にメイン料理に至っては、分子ガストロノミー分野の要素を取り入れてるんじゃないかと思われる調理法の物もあり、フィエキーなことこの上ない!!
説明されたらそこに至った経緯が分からないでも無かったけれど、説明されても「これが?!」と信じられない物があったくらいだからねー。
間違えても当たり前。
そんな距離を料理に与えてくれているのは、お店の思い遣りかもしれませんね。客が間違えても居心地悪くならないように。
思い違いを正して反省、謝罪します
なるほど、この店が人気というのも納得。
企画だけで客を読んでるのかと思いましたが、うん、私が間違えていました。ここのシェフ、イってるわ(笑)
センスと技術が半端ない。
しかもこちらのメニュー、3ヶ月ごとに変わるんだそうです。コースは3種類あるから1ヶ月に1コースずつ食べれば毎月違ったモノを楽しめるかも…(おいおいw
しかし…当初は味覚の6割を占める視覚が無くなったらモノが美味しくないんじゃないか、との予想もあったわけですが、経験して見るとあれほどじっくり味わったこともないんじゃないかと思って見たり。
美味しかったかどうかと言う観点とは別に、素材や調理法を予想しながら、あんなにじっくり味わったことが、ここ最近あったなかと。
また感じられる味覚も、もしかしたら見えているときよりも鋭敏であったのではないかと思って見たり。
そのコースを食べたことがある人にだけの権利として、もちろんお金は出すから、見える環境で同じメニューを食べさせてくれないかなー。同じ料理を、違う環境で食べ比べてみたい。そんな企画やってくれないかなー(笑)
ともかく。。。
色々と衝撃的な経験でした。
そして言っておきたいのは、ここがホーチミンの飲食店人気トップを張ってる理由は、その企画性もあるだろうけど、味ありきだからだろうと思います。
この時の他のコースに関する感想は言えませんが、私がこの時体験したWEST(西洋料理)に関する腕前は「至高」でした。
ホーチミンにいらした時に。いらっしゃる間に。
こちらの体験は、是非試してみた方が良いのでは。
世界的にも知られたお店であるようだし、実際、環境的にも料理的にも素晴らしい体験でした。これは行ってみて本当によかった。
ランキングに疑いの目を向けてゴメンナサイ(笑)
私も一票、入れておこう(^^;
通訳は個別にお引き受けしますので、詳細はお尋ねくださいませ。
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