皆さん生卵召し上がっていらっしゃいますか?
その際にちゃんと生食用の卵、選んでます?
卵の生食文化は日本くらい?
最近は流通が活発で、一概には言えなくなっていますが、基本的に日本以外の国ではた卵を生食しない、いうのは長らくの定説でした。
でも、生卵おいしいですよね。
私がベトナムに来た当初は、まだ生食できる卵が身近になく、非常に我慢を強いられていました。それだけに、日本に一時帰国したときの反動は大変なもの。まるで自分がヘビの化身にもでもなったかのように、卵かけご飯をかき込んでいました(笑)。
今もあるのかな。羽田空港には「うちのたまご」というお店があって、時間が許す時は、でっかいスーツケースを持ったまま、モノレールに乗る前に、たまごかけご飯を食べていたものですw
最近では世界的な日本食ブームもあり、卵かけご飯そのものはハードルが高くても、すき焼きの生卵、あるいは半熟の「かつとじ」などが広く普及してきました。海外の方から「生卵なんて気持ち悪い!」と言われる機会も、以前よりずいぶん減った気がします。
結果として、私たち日本人も海外で生卵(や半熟卵)を口にしやすくなっているわけですが……実はこの「生卵の安全性」に関しては、未だにいろいろな誤解が多いようです。
もちろん常識と言うのは、新たな科学的根拠が発見されることによって変わっていくものではありますが、現時点での私の見解は、これまでもいろいろ述べてきております。
自分で洗っちゃダメ、絶対!
卵を生食するには、しっかり洗浄されたものを選ばなければなりませんが、自分で洗浄するのは絶対にNG。
これは少し前の記事でも書きましたが、理論的にも明白な話。
私はこれを、あくまで素人が自分で洗うのはNG、と言う意味で書いたのですが、先日、そもそも、卵を洗うのはNGと言う意見を見たので今一度言っておきます。
専門の業者さんが行っている「洗卵」は、ただ水を通しているわけではありません。
・卵の内部に菌を吸い込ませないための「厳密な温水管理(40〜50℃)
・「次亜塩素酸などの殺菌剤」を用いたシャワー
・雑菌を繁殖させないための「急速温風乾燥」
・非接触で表面の菌のDNAを破壊する「紫外線(UV)照射」
これら一般家庭では到底不可能な、何段階もの科学的アプローチを経て、初めて「生食としての安全」を作っています。単に「洗えばOK」という次元の話ではないのです。
洗浄された卵は危険(?)という人の言い分
その「未洗浄でも大丈夫」と主張する方の言い分をさらに見ると、どうやら
「卵を洗うことで、本来卵が持っている天然の保護層『クチクラ層』が壊れる。だから洗うこと自体が危険を招いている」
ということらしいのです。
これを鵜呑みにする方がいないことを願うばかりです。
おそらくその方は、
「工場で卵を洗った後、そのまま無防備な状態で放置されている」
と想像されているのでしょう。しかし、生食用に洗浄された卵には、クチクラ層の消失を補うためのそれ以上の強力なバックアップ対策がとられています(日本の場合)。
クチクラ層がなくなって無防備になった卵を保護するため、日本では10℃以下の冷蔵流通が徹底されています。これで雑菌の侵入や増殖の機会を完全にシャットアウトします。
対策2:人工クチクラ(オイルコーティング)の塗布
(※アメリカや海外の近代的な工場で多いですが)洗浄によって失われた天然のクチクラ層の代わりに、食品グレードの安全なオイルを薄くスプレーして、人工的なバリアを作る技術も定着しています。
対策3:容器(パック)まで丸ごとUV殺菌
卵の表面だけでなく、それを包むプラスチックパック自体も、卵を詰める直前にライン上で強力なUV照射殺菌が施されます。工場全体をクリーンルーム化することで、家庭に届くまで「そもそも菌に出会う機会」すら作らないのです。
ここを考慮せずに「卵を洗浄する=クチクラ層を壊すから危険」というプロセスだけを切り取るのは、圧倒的な情報不足。早計というほかありません。
そもそもそれが危険なら、日本は今ごろ生卵が原因の食中毒の嵐になっているはずです。 しかし実際には、メーカーが指定する環境下で、賞味期限内に食べる分には、そんな頻繁な食中毒は起こっていません。
「卵を洗浄すると危険」という言い分は、実際の結果とあまりにも乖離しています。
そして何より、日本の卵業者さんたちがこれまで血の滲むような思いでつぎ込んできた労力やコスト、技術向上のための心血を「まったくの無駄」と言っているに等しい。
誰よりもコストを削りたいはずの企業が、なぜそこまでやるのか。日本の衛生管理の努力に対して、あまりにも無理がある暴論だと私は思います。
そもそも洗浄だけの話じゃない
そもそも、表面だけの話じゃない
卵の食中毒の主犯格である「サルモネラ菌」ですが、実はこれ、卵の殻の表面に絡みついているだけではありません。親鶏の胎内(卵巣)を通じて、卵ができる前段階で「卵の内部(黄身や白身)」に直接侵入してしまうケースがあるのです。
つまり、本当に「生食を可能にする」ためには、卵が産まれる前段階からのアプローチが必要不可欠。
この話をするとよく「餌に抗生物質を大量に与えて菌を殺しているのでは?」という陰謀論的な話が出がちですが、それも間違いです。日常的に抗生物質を使い続ければ、薬の効かない「耐性菌」が生まれてしまい、逆にコントロール不能になるリスクがあるからです。
そのため、現代の生食用卵の現場では「そもそも養鶏場にサルモネラ菌を入れない」という、徹底した予防対策がとられています。
・鶏が口にする餌を高熱で加熱殺菌する
・腸内環境を整え免疫力を高めるため、餌に乳酸菌や栄養素を配合する
生食用ではない通常の卵も一定の管理はされていますが、「ゴールが生食(生ワクチン接種など)」でない限り、そこまでのコストや手間はかけられていないと考えるのが妥当です。やはり、生食用でない卵を生で食べるリスクは、私たちが思う以上に高いのです。
でも大丈夫だった、の正体
「現に自分はこれまで何度もローカルの未洗浄卵を生で食べてきたけど、無事だった」
そう主張される方もいるでしょう。 そうです。未洗浄の生卵を食べたからといって、100%あたるわけではありません。
もし100%あたるのであれば、ベトナム名物の「エッグコーヒー」(※卵黄に砂糖を加え、雑菌が最も増えやすい生温かい温度で泡立てる)や、手作りのマヨネーズを食べるのは命がけになります。 また、黄身がトロトロの「エッグベネディクト」や「半熟の目玉焼き」なども、サルモネラ菌が死滅する温度(70℃以上)には達していないため、厳密には生食と同じリスクを孕んでいます。
それでも多くの人が無事でいられるのは、
単に運が良かったから、
と思うべきかと思います。
そこに科学的な安全の保証は何一つないのです。
「この自家製酒はウチの母ちゃんが作ったものだから大丈夫!」と言うくらい、あてにならない精神論(それでのお亡くなりになったり、食中毒を引き起こす例がベトナムには少なからずある)。
下手をすれば命をかけたロシアンルーレットだと私は思うのですが、それに個人的に挑むかどうかは個人の自由です。他人が止める権利はありません。
しかし、それを「安全だから」と他人に勧めるのだけは、私は大反対です。
日本の食文化と人々の安心安全を守るために費やされてきた努力やコストが無駄だなんて、私には到底思えませんし、何より現場の方々に失礼千万。日本の衛生管理に関わる知識と努力、そして圧倒的な実行力を舐めすぎです。
洗浄されてない卵のリスク
皆さん、卵を買ってきたら冷蔵庫に入れますよね? きれいに洗浄された卵を入れるのは何の問題もありません。しかし、表面にサルモネラ菌がついた未洗浄の卵を冷蔵庫に入れるとどうなるでしょうか。
「パックごと入れているから大丈夫」は通用しません。取り出すときに必ず冷蔵庫を開閉し、空気は動きます。未洗浄の卵を冷蔵庫で保管することは、冷蔵庫内に菌を撒き散らすリスクと隣り合わせなのです。
さらに、それを取り出すときは素手ですよね。
・卵の殻をキッチンの調理台にポイッと直置きしていませんか?
これらは、きちんと洗浄された卵であれば何気ない日常の動作ですが、未洗浄の卵で同じことをやれば、キッチン中を二次汚染することになりかねません。 菌は見えません。そして、南国の高い気温の中での増殖スピードは半端ではないのです。
(※スーパーできれいにパッキングされて売られている加熱用の卵ならそこまで神経質になる必要はありませんが、市場で山積みになって売られているような、糞や汚れがついた本当の未洗浄卵は特に注意が必要です)
生で食べる・食べない以前に、「その卵をお家に迎え入れた瞬間からリスクが始まっている」ということは、覚えておきたい事実です。
わずか数十円のリスクマネジメント
ところで、生食用の卵は、一般的なローカルの加熱用卵よりももちろん値段が高いです。 しかし、何千円も違うわけではありません。そもそものベースが数百円の世界なのだから、パックあたりの差額はせいぜい数十円、高くても百数十円。
もちろん「塵も積もれば」なので、その差額が何でもないとは言いません。言いませんが……。
サルモネラ菌に感染した際の症状は、軽度であれば腹痛や下痢、発熱で済みますが、重症化すると菌が血液に乗って全身に回り、敗血症などの命に関わる事態になることすらあります。
私がこの記事を書くに至ったきっかけとなる危険なポストを見た人が、必ずしもこの記事を見るとは限りませんが、私の意見表明をしておきます。
▶︎生食用の処理をされていない卵は、完全に火を通す調理法で安全に楽しみましょう。






コメント
いつも楽しく拝見させて頂いております。
私なんかもう市場で買った卵で普通に卵掛けごはんで食べてます!
いまだにお腹壊した事ないです。(笑)