ベトナムにも Copi Luwak がある?と言う前提でお求めになりたいと言う方のお問合せをよくいただきます。これに関しては簡単に勧められないと思っているので、その辺の個人的考察をば。
※こちらはちぇりまっぷにて限定公開していた記事のリライトとなります
Copi Luwakとは
Copi Luwakはインドネシアの、Luwak=ジャコウネコを介して生産されたコーヒー。
介して、と言うのは、ジャコウネコがコーヒーの実を食べ、未消化のまま糞と一緒に排泄されたタネの部分=コーヒー豆を」用いたコーヒーだから。
消化プロセスにおける発酵作用がまめに独特の風味を与えるのだとか。
これ、私もインドネシアで何度か経験しましたが、コーヒーに無作法なため、そんなに驚くような美味しさを感じることはなく、「まあこんなものか」と言う感じでしたが、そもそもそれが本物の Copi Luwak だったかどうかすら知る由もなく。
一応、Copi Luwak を生産する農園でいただいたんですけどね。
あれえがフェイクならもう、私は一生、確信持って Copi Luwak を楽しめることはないでしょう。
ベトナムにも Luwak はいるの?
で、そもそもはLuwak=インドネシア語でジャコウネコ、と言う名称が広がっているだけあって、それはインドネシアが大元。
でもベトナムにもある?
調べてみると、ベトナムにも Copi Luwak はいます。
Da Latに専門の農園があり、そこで味わうこともできる様子。(私は未訪問です)
だから Luwak がいるかいないか?と聞かれたら、答えは「いる」。
ですがその生息数が明確に記された資料は見つからず、その農園で絵もごくわずかな頭数しかいないとの情報あり。
そんな小さな農園ですら話題になるくらいだから、もし大規模に生産している農園があたら、もっと人の口の端に登っていることでしょう。しかし私が知る限りは、ない。
でもいっぱい出回ってるよね?
はい、スーパーでも動物をパッケージに記して、「あたかも」それがジャコウネコののコーヒーのように見せかけているものはいっぱいあります。
またコーヒー豆専門店でも、Copi Luwak を謳っているものがあります。
ですが…考えてみてください。
先ほどお伝えしたように、生産量はごく僅かなものと考えるのが妥当な状況。そんな希少なものが、全国のスーパーに数百円で並ぶ、と考えるには不自然ですよね。
また金額に関しても、いくらベトナムの物価が安いとはいえ、100gあたり数百円で売られてるなんてことは考えにくい。
需要と供給の観点から見ても、それらが本物であると考えるのは無理がある。
ただし、ブレンドされてる可能性はあります。
数%とか。
何十%もいかないでしょうが、1%でもブレンドされてれば、ジャコウネコのコーヒー、といえなくもないかもしれない。おそらくはその辺の表記に関する法整備、まだまだされていないと思いますし、そもそも表記されてないものの方が多い印象…orz
では高ければ本物?
とも言えません。
需要と供給論からいうと、希少価値のあるものは高くなる。だから高いものは良いものであろう、と考えるのは通り。
でもその通りが通らないのが東南アジア、ベトナムの実情だったりします。
ライチでもそうです。
ブランドでもある、Thanh Ha と言うところのライチは高く売れます。実際ものも素晴らしい。ですが、本物を知らない人には「Thanh Haのライチです」と言うだけで高く売れる。
そこを利用して、全くその産地のものではないのに「Thanh Ha産です」と言って高値で売ってたりします。
見極められない消費者がいるならば、そこを利用しよう、という商売。
私はそう言う商売に全く賛同しませんが、事実上、そう言う商売は成り立っており、私も知らぬ間に他の場面で、本来の価値を知らずに対価を払っている場面はあるかもしれません。
また先ほども言ったように、食品に関する原材料表記などに関しては、本来販売するものには全ての規定事項が明記されることが義務付けられてたとは思うのですが、守られていないことも多々あります。
と言うか、食材の流通量だけ見ると、そっちの方が多いかも。
少なくとも私はそう思っています。
なので、コピルアックに関しても、高いから本物だ、とは言えないことが多々あろう、というつもりでいます。(あくまで私見です)
ベトナムでは買えないってこと?
正直、私はベトナムで旅行者さんに手に届く範囲(物理的な移動範囲的にと言う意味)で、本物のCopi Luwakにリーチするのは難しい、と思っています。
ワクワクしながらコピルアックのことをお尋ねいただく際に、この事実をお伝えするのは大変心苦しいのですが、安易に「買えますよ!」とは到底言えない。
私が知らないだけで、きちんとしたものを売っているところ、身近にあるよ!と言う場合は、私の勉強不足です。ぜひ教えていただきたい。
ですが、できる限り探して、買える範囲で試してみましたが、そして私は、飲んですぐに「これは Copi Luwak だ!」と判定できるほどのコーヒーの目利きはできませんが、単純に、
不味いものが多い
好みの話、とかじゃないです。明確に不味いです。
明らかな酸化が進んだものや、そもそものローストの仕方が杜撰だったり、そんなに貴重なものに素の香りがわからなくなるほど香料を添加するのも謎な話。
凄まじく不味くて、中にはリアルに吹き出したものもありました。
ということで、身近に安価で買えるものは正直、お勧めしません。なんなら高くてもお勧めできる根拠を自分は持ち合わせていない。
諦めるか、可愛い動物があしらわれたものを「ネタ」として買うか、かな?と。
でもネットで買ってる人見たよ!
そうですね。私もこのことについて調べるために色々調べると、これを、ジャコウネコのコーヒーとして買ってる方の情報を多々見かけました。
Trung Nguyen Legend、と言う、国内最大手のコーヒーチェーンが持つ商品。
225gで、1,255,000vnd。
約7,000円。(2025年5月11日現在)
100g あたり 3000円です。
なかなかな金額。
でもこれでも私的には、本物だったらもっとするんじゃない?と言う印象。あくまで個人的な感覚ですが。
そして。。。
パッケージを見回して文字が書かれているところをくまなく見てみたのですが、
↑は、会社の詳細情報。
↓は、淹れ方みたいなインストラクション。
パーセンテージは豆の比率とかじゃなくて、成分的なもの?カフェインの量とか。
で、最後のこの一面にやっと見つけた。
WEASEL の文字。
WEASEEL =イタチです。
ジャコウネコは、Luwakとそのまま記されるか(それほどに唯一無二の存在なので)英語に訳すとしたら、Asian palm civet などと記されるでしょう。
たまたまベトナムでは、ジャコウネコのことをイタチと呼ぶのでは?と言う意見もありましたが、Luwak はブランドを示す最高の営業ツールです。もし本当に使っているのだったら、それを使わない理由はなんでしょう?
なので、これはジャコウネコのコーヒーでありえないと思います。
ですが。。。
正直なところは誠実だろうと思われる
ジャコウネコだと言わずに、ちゃんと、WEASELだと表記してるのは、大変に誠実だと思います。
また、「生体発酵」と言うプロセスを経ているなら、それがイタチであろうと貴重なものであることには変わりなく、ジャコウネコによる生産物の Copi Luwak ではないけれども一定の評価はできるのかな、とは思います。
なので今回依頼をいただき、3つほどこれを買う機会があったのですが、そこまで話して、ご納得いただいてからお引き受けしました。
私も至らないところは多いですが、わかる範囲調べて自分が信じられないものは「これがジャコウネコのコーヒーです」とは言えませんので、正直に、違うものであろうと予測されることは伝えて、お引き渡ししました。
そのような対処をさせてもらえたのは、この商品が正直に「イタチコーヒーです」と書いてくれてるから。
そこはありがたいと思いました。
味見することはできない?
で、味についてなんですが、私はもともとこちらのブランドのコーヒーがあまり得意でなく、自分でこの商品を買うモチベーションとお財布のゆとりはありませんでした。
ですが、味わってもいないものを人にお渡しするのもなんだな?と思い、お店の方に、これを味わう方法はあるか?と聞いたらメニューにあるという。
このページの一番上にある、
Ca Phe Sua Da Ngon Nhat The Gian
と言うもの。
訳すと、The Best Iced Milk Coffee In The World。
この辺絶妙ですね。The Best Coffee の称号を持つのは Copi Luwak を想起させます。しかしそうとは書いてない。そして誰もが「うちのコーヒーは世界一!」と
「信じて」
提供していることはあり得る話で、それが数値的な事実ではなくとも、比喩的な表現としてなら、許される言い回しではあるかもしれない。
嘘はついてない。
でもここにも Copi Luwak とは書いてない。
WEASEL(イタチ)とも書いていない。
すごいマーケティング力。
相当に巧妙。
攻めるべきところは見つからない。
でも誤解を誘う表現ではある。
どこまでのラインをよし、とするかは、人それぞれ、と言うことでしょうか。
んで、味は?
で、せっかくメニューにあるのなら、と私、いただいてみました。189k。コーヒー、一杯に😭
でもまあ経験値としては持っていないと、人に話もできまい。必要経費だ(経費、どこからも出ないけどw)と思い、半分泣く泣く頼んでみました。
なんか価格に対しての満足ができるような、やんごとなき様相で登場です。このカフェでコーヒーを飲むのは10年ぶりくらいかもしれない。
まずはフィルターを通して作ったコーヒーを、氷が入ったカップの中に移し替えて、ごく普通の、カフェスダーと同じようなプロセスでいただきます。
あ、うん。
ここのメインラインナップに比べると、別物の域で飲みやすい。
こちらのカフェをお好きな方がいたら申し訳ないが、豆の傾向やローストの好みの話なので、ここのベースラインが苦手なのは、私の好みの話だと思ってお許しいただきたいのだが。。。
本当にここのコーヒー、私は普段味的に飲めなくて。
しかし今回のは、速やかに飲めたし、どちらかというと清廉なイメージの味わい。
これを是非ともまたこの金額を出して飲みたいか?と言われたら私は躊躇するけれど、イタチコーヒーであることは事実だろうし、その経験値を得られたと言う意味では、価値ある189k。
正直ホッとした。
私が飲めないと思ってるようなものを、頼まれたからといって人に手渡すのはとても心が軋むから。でもこんなタイプの味なのだったら、これはお渡ししてもよろしかろう。
あくまでこれが本当にイタチコーヒーだったら、と言うこと前提ですが、日本では珍しいものだろうし、望まれる方が納得して買われる分には、1経験にはなろうと思う。
ジャコウネコではないけどね。
他の問題
さて、ここではジャコウネココーヒーに関わるベトナムにおいての話と、誤解がありそうな商品について話しましたが、そもそも、本物の Copi Luwak に関しても、味や質の問題以外の背景が。
本来は野生の Luwak が排泄したものの中から拾った豆に希少価値があったと言う話。
ですが昨今は、ベトナムにもあると書いた「農園」で、「飼育」されて採取されてるケースも多いと聞きます。
この辺は私自身が見たものではないのですが(インドネシアの農園で見たのは1、2匹の客寄せジャコウネコだった)多くの方から、その飼育現場の感想を聞かされたことがあります。
ご想像の通り、目的は彼らの体を通った種子を採取することなので、彼らが好むと好まざるにかかわらず、たくさんのコーヒーチェリーを主食として食べさせられ、排泄物を採取されていると言う話。これはイタチに関しても同じかと。
まあでもそこを責めると、あんたが食べてるフォアグラなどはどうなのか、いや食肉そのものもどうなのか、と言う話になるので、私はこの点を批判する立場にはありません。
ですが、人によってはそう言う背景があるなら加担したくない、と言う方もおられましょう。
なので、こういう生態プロセスを経たコーヒーを勧める立場にある方は、その背景を知っておくことは必要かなと。
ただしそれを最初から相手にバンバン言う必要ないと思います。ワクワクと興味を持って聞いてきた方に、いきなりこの現実を突きつけるのはあまりに暴力的に感じます。
以上、あくまで私的な見解ですが、ベトナムにおけるジャコウネココーヒーにまつわるあれこれ。確定的なことは言えないので、あくまで一個人が可能な範囲で経験した結果に至った意見として、「参考材料」の一つとしてもらえたら幸いです。
コメント